寒天の歴史を知るには、「ところてん」を知らなければなりません。「天草(テングサ)」を煮溶かして作るところてんは、奈良時代から人々に食され、その歴史は約1300年と言われています。時を経て江戸時代、京都のとある料亭で食べ残されたところてんを亭主が戸外に出しておいたところ、寒さのため夜間に凍結、昼間は天日にさらされて乾燥したところてんがたまたま発見されました。これが「寒天」の起源です。
旅館の亭主が煮立てて食べてみると、色が透き通って美しく、海藻独特の匂いも抜けて美味しいことを発見。以来、寒天は300年以上にわたって日本の食文化を担っています。
江戸時代、戸外で凍結したところてんから「寒天」が誕生
本来、ところてんは海の岩場に自生する「天草」のみを原料としていました。煮出したものがところてんに、それを凍結・乾燥させたものが寒天となり、天草独自の保水性・弾力性によって独特の食感が生まれ、広く人々に親しまれてきたのです。また、天草のもうひとつの特徴である「固まる力」によって、寒天はさまざまな用途に使われてきました。 しかし近年、天草の収穫量の減少とそれに伴う価格高騰によって、ほとんどの寒天には天草だけでなく「オゴノリ」が使用されています。オゴノリは天草と同じ海藻ですが、天草と比べて入手しやすい一方で、固まる力と保水性・弾力性がとても弱いため、化学的にその成分を抽出して使用されています。
天草は国内では北海道、静岡県、愛知県、青森県、大分県、徳島県、高知県等、国外は韓国、モロッコ、インドネシア等に生育しています
ところてんの流れから、元来の日本で食されていた寒天は「糸寒天」でした。その後登場した角寒天と粉寒天、3種の寒天はそれぞれ成分や製法が異なります。昔からの糸寒天は、天草100%、天日干しの伝統製法で作られてきました。角寒天は今でも伝統製法が主流ですが、その角ばった形状を出すために、天草とともにオゴノリを使用するのが一般的です。粉寒天は工場で生産され、そのほとんどがオゴノリを主原料としています。粉寒天が普及するまでは、「高級和菓子店には糸寒天、家庭用には角寒天」と言われてきました。今では家庭用の寒天のシェアの多くを粉寒天が担っています。
糸寒天
角寒天
粉寒天
天草100%で作られた伝統的製法の糸寒天は、工業的に作られた粉寒天と比較して、保水性・粘弾性に優れた分子構造をしています。分子同士の結合が強く、水を蓄える性質にも優れています。また、天然の糸寒天には、コレステロール低下作用等、豊富な栄養効果が実証されている「アガロペクチン」が多く含有していますが、工場生産された粉寒天にはほとんど含まれていないことが学者の研究によって実証されています。
伝統的な寒天づくりでは、釜で煮た天草を流し器で固め、できたところてんを外気にあてて乾燥・天日干しを繰り返します。天日干しの寒天は、工場生産された寒天に比べて、旨味成分が多いこと、高い抗酸化作用があることが長野県試験場の実験結果から報告されています。
寒天の成分は、水分以外の80%が食物繊維そのものであり、カロリーはゼロ。 水溶性と不溶性、両方の食物繊維の働きが期待できます。食物繊維が豊富なことから、デトックス作用が期待され、ダイエットなどの美容面、便秘解消などの健康面でも注目を集めてきました。もうひとつ、天草の成分であるアガロペクチンには、抗ガン化作用と、コレステロール値低下作用、美肌作用があることが伝えられています。天草100%、伝統的製法で作られた糸寒天はこのアガロペクチンを豊富に含み、日常的な摂取で、健康や美容に役立ちます。
調査対象 | 茅野市内の40〜70歳の男女60名 |
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調査方法 | 3ヶ月間、週に5回以上天然寒天を食べる |
寒天摂取方法 | 1日2g・4g・8gの天然寒天を、時間を決めず自由に摂取する |
食べ方 | 普段の食事に加えて食べる(ご飯・味噌汁・スープ)※甘いデザートを除く |
調査実施者 | 長野県寒天水産加工工業協同組合 |
調査協力 | 茅野市民60名 小口晋平医師(小口病院/内科) 安藤親男医師(リバーサイドクリニック/内科) 宮本真理夫(諏訪中央病院/内科) |
結果分析 | 奥原正夫(諏訪東京理科大学/統計品質学) |
協力 | 茅野市 |
貧血などは見られず、必要なミネラルは吸収されていると思われる。
(出典:『寒天・ところてん読本』)